新世界より

 見かけのページ数以上に情報量が多くて、思ったよりも時間がかかりましたが、読み終えました。明日ともだちに貸すという約束をしてしまったんですが重くてどうにも持っていくのが厭な貴志祐介の『新世界より』。オチは酷評していいくらいだと思いますが、貴志祐介の例に漏れず中盤はとても面白かったです。こういう気色の作家ではないにしては設定も練ってありました。しかし作品的に合法に12歳健康少年少女のガチホモガチ百合をねばねばと描写するあたりやはりこの人の根幹にあるのは変態的なエログロだと思いますよぼくは!(げっそり
 少しだけ感想みたいなものを置いておきます。一応ネタバレと書いておきます
 オチについては、長編すぎて如何にベテランといえど着地点を間違えてしまったのではないかという感が否めません。結局バケネズミにまつわる戦争と倫理で締めてしまっていいのか? という、タイトルと冒頭との釣り合いが全く取れていないことと、あとは締めの文章があまりにも微妙すぎるという直接的な理由とがあります。終わったあとに上巻の冒頭を少し読み直してみても、もっとあからさまな文明崩壊のようなものを予感させるものなので、やはりこの終わり方はどこか消化不良。覚が根のところで残虐な性格であるということに象徴される人間側の悪徳にも触れないで終わってしまって、結局そういう性質を肯定(看過)したままでいいんですかサキちゃんは、って気持ちになりました。悪鬼と業魔の設定はよくできていると思いましたが、それなら覚みたいなのが業魔化する方が、ストーリーとのかかわりはともかくそれっぽくない? とも思いました。とはいえ、業魔化は無差別というのがミソだから、それならやはり別の帰結を呼んでほしいものです。少なくともあれだけ再三殺しを愉しむような描写をしておいて放っておかれっぱなしというのは気持ち悪いです。 それと少し関連して、上巻のはじめの方でやっていた呪力を使ったボードゲームのようなもので、ルールを蹂躙してでも勝ちに固執する人間の存在が相手チームにいることに一同が戦慄したという節がありましたが、あれは伏線でもなんでもなく、やはり単に人間の怖さのようなものを示したかっただけなんでしょうか? 瞬の一件のあとに出てきた結果的にちょいキャラだったクラスメイトなんかが実はあのときの黒幕だったんじゃねとか思って読み進んでいたらただの雪博士になってしまったっきり音沙汰無しでええええって感じでした。
 物語におけるいわゆる「転」の部分は非常にうまいので、長編ゆえに小出しにされて訪れる転はとても楽しめました。特に上巻終わりの瞬の部分はよく書いたなと思います。それと、瞬もそうですが、真理亜と守もあれっきりにするところはやはりちゃんとした小説だと感じました。最近のアニメやラノベが元でしたらあれで終わることは先ずあり得ないでしょうから。ジャンルを抜きにしても、貴志祐介はこういう切捨てのようなものは躊躇ない傾向にあるというのも勿論あるんですが…
 で、原作が終わったのでアニメでも観てみようカナーと思ってニコニコ動画にいったらまさかの第1話有料で愕然としました。1話は無料がデフォだと勝手に思い込んでいたので萎えーんって感じです。どうしよ
 アニメに関しては、キャラデザ確かに可愛すぎだとは思いますが、でもメインターゲットがロリコンショタコンであることを考えたら至極当然かも。アニメでどれだけ描写するかは知らないけど。それよりも全体でも三位四位を争うんじゃないか少なくともカブラギシセイさん(笑)よりかはずっと重要なキャラクターなんじゃないかってくらい活躍したスクィーラの声優が浪川・奇狼丸の声優が平田さんということの方が気になります。平田さんはともかく、へもかわさんだめなんじゃないっすかねこれ

新世界より (上)

新世界より (上)

新世界より (下)

新世界より (下)

 ちなみに最後のページ、
>男の子が生まれたら瞬、女の子が生まれたら真理亜と名付けようと考えている。
 って、守どんだけ不憫やねん…