why aren't you myth maker ?

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poem2 赤ペン使い。

 ある日の君は ミスメイカー 大きな短冊背負ったままで 痴異さな通りを潜り抜ける
 ある日の君も ミスメイカー 鎖した棺おけ縛ったままで 汚悪きな通りを踏みたおす
 出会った人々・ミスメイカー? 駄霊も袈霊も 傷だらけなのは玉に瑕
 貴方が元祖か私が教祖 どっちつかずのミスメイカー 通り縋りにインフェクション 
 コイン一枚→   ←ピルおくれ   まだ分らないの ミスメイカー…

conversation2

「……ユニークな詩だね」素直にぼくはそう感想した。それはユニークな詩だった。
「そうだろう。いい詩だと思わないかい」体育座りをしている彼女は微笑した。「今なら特売、たったの20円さ」
 それは安いなァ。ぼくは小銭入れの中を確認した。
「30円ある? 10円玉がないんだ。50円玉なら……」
 しかし彼女は首を振った。
「ぴったりじゃないと売ってやれない。そういう決まりなのさ、残念なことに」
 そうなの…… なら、しかたないなァ…………………………
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The lightning and the lightning who tell me a cruel story on Sunday

 スーパーから家へと続く一本道をたらたらと歩いていた。ぼくの寝不足の頭はだいぶぼんやりしていて、時折振ると前髪から汗が滴り落ちてコンクリートに呑まれていくけれど、隣を往くボブは服の中に扇風機でも仕込んでいるんじゃないかってくらいに涼しげな顔をしていた。
 太陽が高くて そう 嗚呼 あれは蝉が煩い日曜日だったよ。風鈴が涼を呼ぶというのなら、
「風鈴の対義語は蝉だったのかァ」
 そう言えるだろう。なんだろうね。他にも風鈴の対義語はありそうだけれど。クーラーとかそれっぽくない? 自然バーサス作為。
「なに言ってるんですか?」
 突発的なぼくの発言に、馬鹿にしている風でもなくそう言うボブ。いや、別に話を振ったわけじゃないんだ。最近独り言が多くてさ、人がいても別段話を振るために出したわけではない言葉がぽろぽろポロロッカ現象なんだよ。
 あはは。暑さで頭がおかしい。「なんでもないよ」ぼくはそう答えて口をつぐんだ。
 ボブの持つ2つのビニール袋の比較的大きい方にはデラウェアとコンフレークと牛乳が、小さい方には2階の「まいにちのくらし」コーナーで買ったらしいハガキの何十枚かが入っていた。デラウェアは結局適当に決めたらしい(それがぼくと出会ったからなのかどうかはよくわからないけれど、あのまま放っておいたらきっとずっとああしていたことだろうとは思う)。ちなみに買ったハガキはお得意さんに暑中見舞いを送るためだそうだ。パソコンで描いたイラストをプリントアウトするらしい。内容によってはからかってやろうと思っているけれど、何だか上手かったらそれはそれで、下手だったら下手でボブらしいはらしいので、つまりどっちでもアリなんだろうなぁと僕は思っていた。おいしいやつ。
 ぼくは荷物にがっしり両手を奪われながら、ボブの細腕を眺めて歩いていた。ボブの荷物は少ないけれど、でもそれがいくら少なかろうと、振っている腕はその遠心力でふとした拍子にポキッと間接が外れてしまうんじゃないか、と不安にさせるほどに華奢でまっさらな腕だった。ぼくの片手が空いていたらたぶん持ってやっただろうし、そのまま持ち去るフリをしてからかうのも一興だとは思っていたけれど、  いや、わかっているよ。別に本当に外れるとはこれっぽっちも思っちゃいないよ。そういう光景が脳裏でちらちら過ぎること自体が、ぼくの精神衛生上よくないと言っているんだ。
 だってこいつこんなにチビなんだぜ。台風の日とか冗談抜きで吹っ飛ばされそうなくらいにさ。
 ボブの話が好きなキミにもう少しサービスすると、ボブの服装はチュニック一枚に麦わら帽子、サンダルとピンク色の腕時計、それと肩掛けの小さなカバンだった。説明するまでもないと思うけれどチュニックっていうのはワンピースのことで、ぶっちゃけアッパッパと全く見分けがつかないんだけれど、昔ぼくが妹にアッパッパだーって言ったら侮辱と受け止められたのか顎に一発もらったので、以来は一応そう呼称することにしている。明確に違うらしいんだけれどねぇ。ぼくにはどうにもわからないよ。
「あの」
「ん?」
 と、声をかけられた。ので、ボブの方をみると、また随分下からこちらを見上げていた。
「なんかへんですね」
「なにがだ」
「えーと。……あなたとこうして並んでいるのは」
「……そう?」
「そうですよ。いつも『ボブ』の前で失礼なこと言ってどっか行っちゃうだけの人なのに」
 そう言ってボブは何か読めない表情になってしまった。怒っているわけではなさそうだけれど……
 翌々考えれば、確かに理髪店ボブの店頭以外で出くわすのも、話すのもはじめてだった。でも何ていうか、そういう言い方をするにしては少しご近所すぎないか? だってもう目と鼻の先だぜ? 理髪店ボブ。
 と、
 そう言おうとして、ぼくは顎で前を差そうと、そちらに目をやり、そこで気が付いた。
 理髪店ボブの前のガードレールに、暇そうに腰をかけている女がいたことに。
 そして「あれ? お客さんですかね?」腕時計をチェックして「まだ開店時間には早いんですけど……」と言いながらやや駆け足になるボブに置き去りにされたぼくが、その女が大島ツクヨだというのにも気が付くのは、もうたったの数十メートル後の話だ。何度も言っているから、キミももう百にも承知なこととは思うけれど。こう、引きたい気持ちも理解してくれよ。