雑記です。

『こめんと』
 >比翼さん。比翼さんが何を書きたい何志向の方かっていうのはよくわからないですが、どこで何を書くにせよ1を知っている中で1を書くんじゃなくて、どうせなら10を知っていながら1を書いた方がいいですよね〜っていう、そんな話です。ぶっちゃけ古典なんか全く読んでなくても運とか才能があればそこらの作家にはなれるでしょうが(というより、古典というものが本当に活きるのは生き方そのものに対してですよ、とオレより30歳年上の人たちは言いますので、オレが古典を読みたいのは別段作家志望云々とは関係なく、どちらかというと常識とかそういう方面に向けてですね)、とはいえ全から一を繰り出す人間になりたいものです。神メモはそういうことでしたらまた機会があれば続きを読もうと思います。作家になられた暁には何を書いているのかこっそりメール頂けたら嬉しいです〜
『  』
 上とは関係のない話。このごろまたよく考えること。三島という偉大な作家が、またオレが何をするときにも付き纏うようになっている。好きな作家とか訊かれたときに三島と答えるのは難しいのは、既に好きか嫌いかの域なんか超えてしまった位置にいる作家だからなんだろうと思う。たとえば人の話を聞くときや、自分で新しく何か考えているときなんかは、必ず三島の至言に沿っているのかいないのかが第一の思考になります。たとえばオレがよく話をする教師は「shouldが若者をダメにする」といいますが、三島は「〜したいなどといふ心は全て捨てる。その代わりに〜すべきだということを自分の基本原理にする。そうだ、本当にそうすべきだ」といいます。そしてそうなるとオレの中では正当性というものが割れてどちらも正しくありまた間違いであり、そう判明してから徐々に緩慢と身を預けることになります。そのどちらかに。でもそれは思考停止といってもいい。支配といってもいいわけだ。そここそ好きでもなく、また嫌いでもなくなる。そういう感情の判定すらできなくなる。沈黙しかないからだ
 三島の云うことだと、最も有名なのが仮面の告白を執筆するに際してあらわれた「あらゆる種類の仮面の中で素顔という仮面を僕は一番信用しません」という言葉で、これがオスカー・ワイルドの「素顔で語る時、人はもっとも本音から遠ざかるが、仮面を与えれば真実を語りだす」と同義であるのが、果たして偶然なのか意識したものなのかはわからない。とはいえ考える毎に本当にそうなのかはわからなくなっていった。個々の美意識や美学が徹底しているが故に醜悪なものになると前提するとして、人間が誰しも胎の中に抱えている本音を素顔だとするならば、それは確かに人に晒していいものではないとはいえ、でもそれがどうして真実として成り立たないのかがわからない。良いか悪いかはともかく真実ではあるはずだ。しかしこの耽美主義のふたりは其れが真実でないというし、信用もできないという。三島はもちろん超のつくほどの右翼で、人は自分のためでなく大儀のためによってのみ生きられるとまで言った人間だが、胎の底では国のためではなく自分のためだけに戦っているようなやつは信用できないと言っているのか。でもそうなるとワイルドの発言とは趣旨が異なることになる。
 三島という美しすぎて何もいえなくなるような文を書く日本文学界の神においても、オレが唯一首を傾げることができるのが、やはり仮面問題についてだけしかない。それ以外のところは全く圧倒されてしまう。同調かそれ以前の空虚にだまされるように。そして唯一格闘のできる仮面問題は突き詰めていくと人間失格についての話にもつながる。決して素面を晒さずに、他人にいいようにいいようにと振舞った葉ちゃんは、晴れて人間を失格して「神様みたいないい子」になれたわけだ。クソみたいな人間を失格するために、底面は底面のままにしておくことこそなのか。葉ちゃんの生涯をみせらえると、どうしても思考停止が訪れざるを得ない
 で、また同じことを書いてしまった。やはり最終的には人間失格を賛美する形に戻りますね。まあ、原点なんだろうなあ。すべての。ほんとうにすべての。だって人間失格の締め方は何度見ても完璧で、その圧力は思考停止しかさせてくれない
 まさに  語れば語るほどチープになる でも語らずにはいられない
 そして書くごとにまたあの文章に触れたくなる。
 三島と太宰を除いた、まあ誰でもいいよ、谷崎でも島崎でも吉行でも朱門でも小島でも近藤でも庄野でも、彼らなら全員好きではあるし「とてもいい」んだけど、それでもオレに思考停止まではさせない。それが好きを超えた先にある、ある種の教主的な域にまで至らせるほどの狂気なんだと思う。梶井はまた別の位置になるけど、線上にはいない。漱石や鴎外も然り。考えることもさせない程に速攻で脳天を潰して涙を誘う作家が、果たしてあらわれるのだろうか。この先の現代に
 全くの愚問だとしか思えない  全部模倣でしかねぇんだよ くそ