神様のメモ帳1

 また久しぶりのラノベです。書店で見てみたらアニメ化の帯がありましたが、どうやら7月からぬるぬる動くそうです。観るか観ないかはよくわかりません
 杉井光という作家にはまずプライベート(とはいえ公開している以上、内実はパブリックと分けて半々くらいだと思いますが)の小説から読ませてもらっていて、(ある程度までは)遠慮と他人のメスが入っていない素の部分から入ったせいか、商業小説となるとやはり分別はつけてくるのだろうか、という変な視点から読み始めたのですが、上手い具合にライトノベルになっていて中々感心しました。一般レーベルではまたあのハルキ侍になるのかもしれませんが、少なくとも今ここでラノベとして昇華できているのは非常に良いと思います
 ただし主人公は相変わらず無能で(初期設定は)他人に関心がない典型的アレなヤツでした。そしていくら渋谷が舞台で相手がドラッグだろうが現実味がないは全くない。というより、現実味がないこと自体は全くどうでもいいんだが、作者が現実味を出そうとしているのに反して、という現実味の無さだと、どうしても滑稽にならざるを得ないのは悲しい。でもそれはラノベ的キャラが近くで回っている以上は仕方の無いことなのかもしれない。やはりこういう街の事件を扱うラノベだと片山憲太郎の『電波的な彼女』の右に出るものはいないように思います
 正直な話、ストーリーからキャラまでさして引き込まれはしませんでした。アリスは可愛かったですが、それもある程度のところまででした。決してつまらなくはなかったとはいえ、続きを直ぐ明日にでも買いたいかといわれるとそうでもないというのもまた事実です。
 もしかしたらシリーズ物として捉えたらずっと面白くなるスロースターターなのかもしれませんが(特にキャラ方面はそうなることが多い)、なんにせよ即効性はないです
 どうでもいいですが「増えるぞニート! 燃え尽きるほどニート!」の節は笑えました
(追記:ひょんなことで彩夏が戻ってくることを知ってすげーげんなりしました。不幸のお裾分けでここにも書いておきます。へへ)

神様のメモ帳 (電撃文庫)

神様のメモ帳 (電撃文庫)

 以下関係のない話。表紙を見て思い出したのですが、おれがもっと文学作品に対して変に尖った矜持を持っていた時分に、このラノベを読んでいた三島の名前も知らないような同級生が、小説の貴賎を分けて文学を誇りに思う方が大層気持ちが悪いと言っていたのを聞いて、救いようの無さを痛感したときの浮き足立った気持ちが蘇ってきて、読んでいる最中にずっと脳裏をチラついていました。今聞いても変な気分になるんですから、あの時はもっと凄まじかったんだと思います。でも今のオレに直接なにかを言う資格はまだないんですね。少なくともあと10年くらいはないように思います(10年後も同じこと言っているような気がしますが…
 おそらくAKB48の楽曲がモーツァルトのピアノ・ソナタよりも素晴らしいと言う男子生徒の多さに眩暈がしたというとある英語教師の言説よりもはるかに主観的にできているから、もう少し溜め込んでおくのさ、こういうのは