いぬ。

 うちの犬が最近ずっと左目を瞑っているから何かあるのではと重い腰を上げて母と妹が動物病院に連れて行ったところ、角膜に穴が開いていて、師曰く「あと少しで失明だった」らしい。頻繁に通院させるためにおおげさぶっこいてんじゃないのかなァとおれが思う一方で母と妹はほっと安堵しつつ目薬の処方を試みるも、何か異常な抵抗にあい失敗続きしているという話。犬種はパピヨンで驚くくらい華奢なわんこなんだが、目薬に生命の危機を感じるらしく、そのときばかりは馬鹿力が発揮されて、妹に至っては噛まれ引っかかれの生傷に堪えない。仕方ないからと母が外出し買ってきたものは、なんと犬の猿ぐつわ。失敗するだろうなァとおれが思う一方で、その通り猿ぐつわ相手にも子犬にあるまじき馬鹿力を発揮するわんこ。すごいぞわんこ。見ていて圧巻だった。戸惑う人間二人の姿もまたいとをかし。
 しかしいくら面白くとも失明されてますます馬鹿犬に磨きがかかっても困るので協力してみた。反撃の方法が口か前足かしかないんだから、口と前足の間を内肘で押さえつけてクイと上を見上げさせれば注しやすいのではなかろーかと思っていたので実行してみたらドンピシャだった。想像通りにいってなんか嬉しかった。
 そんなはなし